Windows 11を開発用にセットアップする背景
Windows 11をクリーンインストール、またはPCを新調した際、デフォルトの状態では開発作業において不要な機能が有効化されていたり、エクスプローラーの設定が開発者向けになっていなかったりします。
本稿は、開発用の設定変更、Dev Driveの構築、パッケージマネージャー(Bun、npm、pnpm)のキャッシュ集約、および個人的によく利用するツール類の導入手順をまとめた個人用のセットアップ備忘録です。2026年6月時点におけるWindows 11の主要な設定項目に基づいています。
[!NOTE]
本稿のチューニング方針について
ネット上の最適化記事でよく見かける「不要なサービスを50個停止!」「レジストリを改造!」「Windows Defenderの無効化!」といった極端なチューニングは行いません。現代のWindowsにおいてこれらの変更はパフォーマンス向上の効果がほとんどないばかりか、OSのシステム破壊、Windows Updateの失敗、重大なセキュリティリスクなどを招く原因になります。本稿では、あくまでOSの健全性を保ちつつ、開発の生産性とファイルアクセス速度を高める安全なアプローチのみを採用しています。
設定する項目の全体像
セットアップの流れは以下の通りです。基本的にはOSの標準機能の調整と、Dev Driveを活用したディスクアクセスの最適化、ツールの一括導入の3フェーズに分かれています。
flowchart TB
A[初期状態のOS] --> B[標準機能の停止とエクスプローラー設定]
B --> C[開発者モードとDev Drive V:の作成]
C --> D[ターミナルとsudoの有効化]
D --> E[パッケージマネージャーキャッシュをV:へ移行]
E --> F[お気に入りソフトウェアの導入]
標準機能の無効化とエクスプローラーの設定変更
不要なバックグラウンド処理やウィジェットをオフにしてシステムリソースを確保し、ファイル操作の視認性を向上させます。
タスクバーの整理
タスクバーの右クリックメニューから「タスクバーの設定」を開き、不要な項目を無効化します。
- ウィジェット:OFF
スタートアップアプリの停止
タスクマネージャー(Ctrl + Shift + Esc)を開き、「スタートアップアプリ」タブから、ログイン時に自動起動する不要なアプリを無効化します。
- Microsoft Teams:無効
- Microsoft OneDrive:無効
OneDriveの同期設定変更
通知領域のOneDriveアイコンから設定を開き、自動同期を最小限に抑えます。
- 「設定」>「同期とバックアップ」>「バックアップの管理」へ進み、すべてのフォルダのバックアップをOFFにします。
- OneDriveにバックアップを取る運用を行っている場合は、この項目は無視してください。
エクスプローラーの表示設定
エクスプローラーを開き、上部メニューの「…」(もっと見る)から「オプション」を開きます。
- 「表示」タブの設定:
- 「登録されている拡張子は表示しない」のチェックを外す
- 「一般」タブの設定:
- 「エクスプローラーで開く」のプルダウンを「PC」に変更する(ホーム画面の読み込みを無効化)
Microsoft Edgeのバックグラウンド動作抑制
Microsoft Edgeを開き、「設定」>「システムとパフォーマンス」から不要な常駐機能をオフにします。
- スタートアップブースト:OFF
- Microsoft Edge が閉じていてもバックグラウンドアプリの実行を続行する:OFF
開発用機能の有効化とDev Driveの作成
開発者向けのOS設定変更と、高速なファイルアクセスを実現するDev Drive(ReFSフォーマット)を構築します。
Dev Drive(開発者ドライブ)とは?
Dev Driveとは、Windows 11で導入された、開発者向けのストレージ最適化機能です。従来のNTFSに代わり、堅牢性と性能に優れた「ReFS (Resilient File System)」フォーマットを使用します。
これにより、大量のファイルにアクセスするパッケージマネージャー(npmやBunなど)の動作、Gitリポジトリの操作、プロジェクトのビルドなどのI/O性能が大幅に向上します。開発環境におけるディスクアクセスのボトルネックを解消するための非常に強力な手段です。
開発者モードの有効化
Windowsの「設定」>「システム」>「開発者向け」を開き、開発者モードをONにします。
Dev Driveの作成
「設定」>「システム」>「ストレージ」>「ストレージの詳細設定」>「ディスクとボリューム」を開き、Dev Driveを作成します。
- 「開発者ドライブの作成」を選択し、新しいVHD(仮想ハードディスク)の作成オプションを選択します。
- サイズを指定します(1TBのSSDが搭載されている環境の場合、256GB程度を割り当てます)。
- 場所は
C:\などでOK。
[!NOTE]
Windows 11のバージョンやビルドによって、設定画面の導線が異なる場合があります。上記の手順以外にも、「設定 > システム > ストレージ > 詳細ストレージ設定 > Dev Drive」から直接作成画面へアクセスできる場合があるため、お使いのOSバージョンに合わせて確認してください。
Dev Driveのマウント
「設定」>「システム」>「ストレージ」>「ストレージの詳細設定」>「ディスクとボリューム」を開き、「VHDの接続」から先ほど作成したVHDをマウントします。
- マウント先は
V:\を指定することを推奨します。
ターミナルとsudoの有効化
Windows 11に標準搭載されたターミナルアプリの設定と、管理者権限実行を簡略化する設定を行います。
- 既定のターミナル設定:
- 「設定」>「システム」>「ターミナル」を開き、既定のターミナルアプリケーションを「Windows ターミナル」に設定します。
- sudoの有効化:
- 「設定」>「システム」>「開発者向け」または「ターミナル」から、「sudoの有効化」をONにします。
パッケージマネージャーのキャッシュをDev Driveへ移行する
パッケージマネージャーによる依存関係の解決とビルド処理を高速化するため、キャッシュディレクトリをDev Drive(V:)内に集約します。
PowerShellを起動し、以下のコマンドを実行して、各ツールのキャッシュフォルダをDev Drive(V:)へ設定します。
setx BUN_INSTALL_CACHE_DIR V:\cache\Bun
npm config set cache V:\cache\npm
pnpm config set store-dir V:\cache\pnpm
[!WARNING]
Bunは仕様変更が比較的早いツールです。将来的に環境変数によるキャッシュ指定方法が変更される可能性があるため注意してください。現在のキャッシュ場所は、いつでもbun pm cacheコマンドで確認することができます。
設定完了後、念のため以下のコマンドを実行してインストール済みのシステムパッケージを一括アップデートしておきます。
winget upgrade --all
Windows 11開発環境におすすめのソフト一覧
手動でのダウンロードとインストールを極力減らし、Windows Package Manager (winget) 等を利用してツール類を導入します。
基本的にMicrosoft Store > UnigetUI > Portable Appsの順で使い分けながら導入していきます。
UniGetUIを使う理由
UniGetUI(旧WinGetUI)は、wingetやChocolatey、Scoopといった複数のパッケージマネージャーをGUIで一括管理できるオープンソースのユーティリティです。
CUI(コマンドライン)での操作に慣れていない場合でも、検索窓からインストールしたいツールを探してボタン一つで導入できるほか、インストール済みソフトのアップデート状況を検知して一括更新することも可能です。パッケージ管理の効率を劇的に高めるため、導入を強く推奨します。
Microsoft Storeでの導入を優先していますが、UnigetUIで導入するアプリ一覧を設定ファイルとしてエクスポートすることもできるので、場合によってはUnigetUIで導入した方が効率的な場合もあります。
Microsoft Storeから導入するユーティリティ
以下のMicrosoft Storeアプリは、Windows Storeまたはブラウザ経由で検索してインストールします。
| ソフトウェア | 説明 |
|---|---|
| Microsoft PowerToys | システムユーティリティ |
| Screenpresso | スクリーンショット・動画キャプチャ |
| Microsoft PC Manager | システム最適化ツール |
| 秀丸ファイラーClassic(ストアアプリ版) | 高機能ファイラー |
| Codex | OpenAIによるAIコーディングエージェント開発環境 |
| UniGetUI | wingetやChocolateyなどのパッケージ管理GUI |
| Windows Terminal | ターミナルエミュレータ |
| PowerShell 7 | シェル・スクリプト言語 |
| QuickLook | ファイル高速プレビュー |
| VS Code | コードエディタ |
| ChatGPT | AIアシスタント(デスクトップアプリ) |
| Canva | オンライングラフィックデザインツール |
| Affinity by Canva | プロ仕様のクリエイティブ・デザインツール |
| Slack | ビジネスチャット・コラボレーションツール |
| Firefox | プライバシー重視のWebブラウザ |
winget, Chocolatey, npm等で導入するツール
UniGetUIまたはPowerShellから winget install コマンドで導入するお好みのツール群です。同じパッケージが複数ある場合はwingetを優先。
| ソフトウェア | 説明 |
|---|---|
| Git | バージョン管理システム |
| WinSCP | FTP/SFTPクライアント |
| 7-Zip | 高機能ファイル圧縮・解凍ソフト |
| Everything | 高速ファイル検索ツール |
| SourceTree | Git用GUIクライアント |
| Bun | JavaScript実行環境 |
| NodeJS | JavaScript実行環境 |
| Espanso | オープンソースのテキスト展開ツール |
| Android Studio | Androidアプリ開発用IDE |
| Antigravity | AIコーディングアシスタント(ペアプログラミング支援) |
| Cursor | AI搭載コードエディタ |
| OpenCode | AIコーディングエージェント(現Crush) |
| Claude Code | ターミナル向けAIコーディングエージェント |
| Claude | AIアシスタントのデスクトップアプリ |
| Google Chrome | Webブラウザ |
| Google日本語入力 | 日本語入力システム(IME) |
| Zed | 高性能・高速なコードエディタ |
ポータブルアプリの活用
レジストリを汚さずにポータブル版で動作させたいユーティリティ類は、PortableApps.com などから個別に入手して V: ドライブ内に配置して運用します。
設定時の注意点とつまずいた箇所
- Dev Drive上のキャッシュとウイルス対策ソフト:
- Dev Drive(ReFS)は、標準のNTFSとは異なる動作をします。基本的にはWindows Defenderの「パフォーマンスモード」が自動適用されますが、サードパーティ製のウイルス対策ソフトを使用している場合、キャッシュ読み書き時の信頼バウンダリ設定が必要になる場合があります。
- 環境変数の反映:
setxコマンドで環境変数を設定した後は、実行中のPowerShellやコマンドプロンプトを一度閉じて再起動しなければ設定が反映されません。
まとめ
以上のセットアップ項目をこなすことで、Windows 11の不要な動作を抑え、高速なDev Driveを用いた開発環境が整います。パッケージマネージャーのキャッシュをDev Driveへ移行するだけでも、パッケージのインストールやプロジェクトのビルド時間は顕著に短縮されます。
